とある双極性Ⅱ型の旅路

双極性Ⅱ型と共に働く日々

過食症(食べ吐き)を振り返って思うこと

私は、約10年ほど過食症(食べ吐き)を経験しました。
その経験と、当時を振り返って思うことを整理してみたいと思います。

はじめに

まず、私は診断基準であるDSMでの過食症に当たる症状が続いていましたが、正式に摂食障害過食症と診断されたわけではありません。

正式な診断名だったうつ病双極性障害Ⅱ型が治療のメインで、主治医からも過食症はそこから派生した症状として扱われていた、という感じです。

なので、あくまで自称、過食症であること、個人的な経験と個人的な思いであることをご了承ください。

過食症体験

過食症になるまで

まず、ざっくり、過食症になるまでを振り返りたいと思います。

私は昔から太っている子供でした。小中学校といじめられていましたが、定番の悪口が「ブス」「ブタ」「デブ」で、外見が醜くかったり太っているといじめられる、という強迫観念を持つようになりました。

またこの頃から、自己診断ですが、うつの症状や軽躁が出始めていたと思っています。
気分が不安定で浮き沈みも激しかったですが、「思春期はみんなそんなもの、大人になったら自然と治る」と私も周囲も思いこんでいて、病気の可能性は考えもしませんでした。

高校からいじめは終わりましたが、いじめを恐れるあまり、周囲の顔色を窺って明るい自分を演じるようになり、精神的な負担が増していきます。
そして大学3年生の冬、就職活動が始まってすぐ、過食症(食べ吐き)が始まりました。

うつ症状や就活のストレスの捌け口として大食いし、「太っていたらいじめられる、社会に居場所がなくなる、生きていけない」という脅迫観念から嘔吐に至って、それがパターン化してしまった、という感じです。

過食症(食べ吐き)の症状

基本的に、ほぼ毎日夕食でドカ食いし、追加で食べ、トイレで吐く。それを多い日は平日でも2~3回、休日だと一日中機会があるのでもっと多く繰り返していました。平均して1日2回ほどだったと思います。

1日に何度か、唐突に居ても立ってもいられない自己嫌悪に襲われ、スーパーで買い込んだり家で自炊したりして大量の食事を用意して食べ、食べ終わると食べ過ぎてしまった自分への自己嫌悪と「太る」という恐怖心から吐く。

その間の自己嫌悪(今思うとうつ症状)も辛かったですが、1日が仕事と過食嘔吐で終わるのも辛かった。夜眠るのも遅い時間になり、睡眠不足で仕事に集中できず、ミスをして落ち込んでまた食べて吐くという無限ループ。

吐いても食べたものを全部出し切れる訳でもなく、体重も短いサイクルで増減があり、何サイズもの服をクローゼットに常備していました。

双極性障害Ⅱ型の診断

過食症になって約6年後、うつ症状で休職した際に初めて精神科を受診し、最終的に双極性障害Ⅱ型の診断名がつきました。
特別、過食症の診断や過食症用の治療はありませんでした。

ただ、夕食後の処方薬を吐いてしまうので、処方を就寝前に変更してもらっていました。(それでも頻繁に吐いてしまっていましたが…)

過食症の終わり

双極性の薬の調整を続けていたある時、ふと「あれ、今日過食も嘔吐もしてない」と気づいてから過食の回数は激減し、半年ほどでピタッと過食症は終わりを迎えました。
過食症になってから約10年、うつ病で休職してから約4年、双極性Ⅱ型の治療を始めて約3年経っていました。

更に約10年経った今は、過食衝動を感じることはありません。(ストレスが溜まると無性に食べたくなったりはしますが無茶食いはしません)

私の場合は、双極性の治療が進むことでうつ症状が軽減し、結果として過食症も治ったという形です。

周囲に対して思うこと

私は3年半ほど、実家で食べ吐きをしていました。食べている量、体型、トイレの吐瀉物汚れと臭い。家族は気づいていたはずですが、誰も、一言も、そのことに触れませんでした。

あの頃、全てが敵だった私は、家族が何か手助けをしてくれようとしても信じられずにはねのけただけだった気はします。
それでも、家族の無反応は「あなたが苦しんでいても知ったこっちゃない」というメッセージに受け取れてしまい、自分をより追い詰めてしまいました。

周りがどう接するのがその人に一番いいのかは一概に言えないと思いますが、「あなたを気にかけているよ」「あなたのことを大切に思っているよ」というメッセージを言葉と行動で伝えてもらいたかったかなぁと、今の私は思います。

当時に自分に何か言うとしたら

私自身が、これ、もっと早く知りたかったなと思うことがいくつかあり、備忘録も兼ねて書いておきます。
どなたかのお役に立てれば嬉しいです。

自分を責めない、皆で病気に立ち向かう

双極性障害について本を読んでいるときに次のような言葉に出会いました。

「対患者さんという構図は止めよう。患者さん・家族・医師でチームを組んで、皆で病気に立ち向かおう」(意訳)、という言葉です。

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双極性障害の人は躁状態のときに自分でもコントロールできない行動を起こし、自分も周囲も傷つけてしまう場合があります。そんなときに、

  • 患者さん自身と、病気が原因の症状(患者さんが自分でコントロールできないこと)を分けて考えよう
  • 患者さんを責めるのではなく病気と戦おう
  • 患者さん自身も、自分と症状を分けて、自分を責めないようにしよう

という考え方です。無性に胸に響いたのですが、これは過食症でも同じではないかと思います。

食べたくなるのも、吐きたくなるのも、病気の症状です。当人一人の気合いで何とかなるものではありません。
自分を責めなくていいんです。一人で頑張らなくていいんです。悪いのは病気です。あなたは悪くありません。

そう言ってもらえているようで、読みながら泣いたのを覚えています。

過食している時、嘔吐している時、それらが終わった後、私は自己嫌悪でいっぱいでした。なんて駄目な人間だろう、消えてしまいたいと思っていました。

あの頃、この言葉を誰かに言ってもらえたら、少しでも気持ちが楽になったんじゃないかなぁと思います。

気合いや努力で治るなら病気じゃない

過食症の最盛期、実生活に悪影響が出ていたこともあり、自分の努力で何とかしようと思ったことは何度もあります。
私の場合、罰金制にしたり、ご褒美制にしたり、お金を持ち歩かないとか、太った時用の服を捨てるとか、人と会う予定を作るとか、ダイエット本にあるようなことも色々しましたが、効果はほぼありませんでした。

当時は、なぜこんなこともできないのかと自分を責めましたが、今振り返って思うのは、本人の努力や気合いで何とかなる問題ではない、ということです。

さいごに

改めて振り返って、私は純粋な過食症ではなかったのかも、と思いました。
あくまで、双極性Ⅱ型の副次的な症状だったのかもしれません。

とはいえ、過食症の時の、ストレスから引き起こされる尋常ではない食欲(飢餓感)はとても健康で正常とは言えないもので、「病気」だったと思います。

自分と病気を分けて考えて、自分を責めるのではなく、病気と向き合って対処していく。

理想論でしかないかもしれませんが、それができると、当人も周囲も、心が楽になるんじゃないかなぁと思います。